Читать книгу 地球への旅 - Danilo Clementoni - Страница 8

惑星地球 - イラク、テル・エル=ミカイヤル

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エリサ・ハンターは、額のいまいましい汗の粒を今一度拭おうとした。汗は彼女の鼻をゆっくり伝い、熱い砂の上に落ちようと決めてかかっているようだ。もう数時間も砂の上に膝をついて作業していた。なくてはならない仕事道具であるマーシャルタウン社製のこて6 で地面をやさしく掻き、墓石の上部のように見える砂の中に埋もれた物体を傷つけないように掘り出そうとしているところだった。しかし、当初からこの理論については確信を持てずにいた。エリサはウルのジッグラト7 近くでほぼ二ヶ月にわたり作業を続けていた。彼女は考古学者としての評判とシュメール言語についての専門知識により、ここでの発掘活動が許可されていた。二十世紀に始まった最初の発掘活動以来、いくつかの墓が発見されていたが、そのうちのどれでも、このような遺物は見つかっていなかった。四角い形とかなりの大きさがあることから、石棺というよりも、ある種の器の「蓋」のように思われた。何千年も前に、何かを保護する、または隠すために、そこに埋められた物。

残念ながら、今のところ上部のほんの一部分が露出しただけで、その下に埋まっている器全体の高さがどれほどなのか、まだ見当もつかなかった。蓋の露出している表面を覆うようにびっしりと彫られた楔形文字は、これまで見たことのあるもののどれにも似ていなかった。

解読するには何日もかかり、幾夜もの眠れない夜を過ごすことになるだろう。

「ハンター博士」

エリサは顔を上げた。右手を目の上にかざして日の光を遮りながら目をやると、助手のヒシャムが彼女のほうに急いでやってくるのが見えた。

「教授」ヒシャムは繰り返した。「基地から呼び出しです。どうやら緊急のようです」

「分かったわ。ありがとう、ヒシャム」

エリサは有無を言わさず割り込んできた休息を利用して、いつもベルトに下げて持ち歩いている魔法瓶から、ほとんど沸騰するほど熱くなった水を一口飲んだ。

基地からの呼び出し……それが意味することはただ一つ、何かまずいことがあったということだ。

エリサは立ち上がり、ズボンに付いた砂を払い、調査の基地になっているテントに向かってしっかりとした足取りで歩きだした。

彼女はキャンバス地の野外テントの半ば閉じているチャックを開け、中に入った。目が暗さに慣れるまで少し時間がかかったが、ジャック・ハドソン大佐の顔がモニターに映っているのは否が応でも見えた。いかめしい顔で空を見据え、画面の向こう側で、エリサが映し出されるのを待っていた。

大佐は公式にはナーシリーヤを拠点とする戦略的反テロリスト部隊の責任者ということになっていたが、彼の本当の任務は秘密裏の組織であるELSAD8 部門が委託・監視する科学的調査プログラムをコーディネートすることだった。ELSADはこの種の組織のすべてを統括する、常に謎に包まれた部門であり、その正確な意図と目的を知る者はごくわずかしかいない。唯一確かなことは、指揮系統が合衆国大統領に直属しているということだった。

エリサはそれは全く重要視していなかった。この探査への参加を承諾した本当の理由は、彼女が世界で最も愛してやまない場所へようやく戻り、好きな仕事ができるからだった。三十八歳という比較的若い年齢にもかかわらず、彼女はこの分野の研究では最も成功した科学者の一人だった。

「こんばんは、大佐。どのようなご用件で、お目にかかる光栄に預かれたのでしょうか」彼女はありったけの笑顔をつくって言った。

「ハンター博士、愛想を振りまかなくても結構。呼び出した理由は分かっているはずだ。君の任務の完了期限は二日前に切れた。これ以上の滞在は許可できない」

大佐は決然たる口調で言った。今回ばかりは、エリサの抗しがたい魅力をもってしても、これ以上の延期は無理そうだ。最後の切り札を使うしかない。

2003年3月23日に大量破壊兵器保有(後に、実際には保有していないことが明らかになった)とイラク国内でのイスラムテロを支援しているとの告発を受けた独裁者サダム・フセインを権力の座から降ろすことを明確な目的として合衆国率いる連合軍がイラクへの進攻を決定して以来、平時にさえすでに困難であった考古学研究のすべてが後退を余儀なくされた。2003年4月15日の正式な停戦は、地球上の至る所に文明が広がる前に人類史上最古の文明が発達した地に再び立ち入ることができると、世界中の考古学者の心に希望の火を灯した。2011年末にイラク当局が下した、「我が国の文化的遺産を引き続き強化する」ために、計り知れないほど歴史的価値の高い複数の現場での発掘を再開するという決定は、ついにその希望を確信あるものに変えた。国連の援助の下、そしてそれ以前にすでに無数の「当局」により調印、確定されていた多くの認可の下、適格な権限を持つ委員会スタッフにより選抜、監督された複数の研究グループが、期間限定でイラク領土内の考古学的価値が最も高い地域で活動することを許可された。

「大佐殿」エリサはウェブカメラにできる限り近づいて、大きなエメラルド・グリーンの瞳が彼女の望む結果を出してくれることを祈った「仰るとおりですわ」。

カメラの向こうの相手に敬意を示すことで、心証をよくすることができることを、彼女は知っていた。

「でも、あともう少しなのです」

「何がもう少しなんだね?」と大佐は椅子に座り直し、デスクにこぶしを乗せて、苛立たしげに言った。「もう何週間も同じ話の繰り返しではないか。具体的な結果を出してくれないことには、これ以上の支援は無理だ」

「今夜、夕食をご一緒する光栄に預かれましたら、その折に再度のご検討に値するものを喜んでお見せします。いかがでしょう?」

美しい微笑で白い歯がこぼれ、長いブロンドの髪を手でかき上げた。大佐を説得する自信があった。

大佐はしかめ面をして怒りの表情を保とうと努めたが、それでもこの申し出をはねつけることはできないと自分でも分かっていた。エリサには常に好意を抱いていたし、二人で夕食を共にするという考えにはそそられた。

四十八歳という年齢にもかかわらず、大佐にはまだ充分に男性としての魅力があった。たくましい体つき、彫りの深い顔立ち、短く刈り込んだ白髪混じりの髪、鮮やかな青い瞳から注がれる決然たる眼差し、さまざまな話題で談笑できる幅広い知識、そして、制服の高官としての疑う余地のない魅力により、彼は依然として「興味深い」男であった。

「いいだろう」大佐は鼻を鳴らした。「しかし、今夜こそははっきりとした成果を見せてもらおう。そうでなければ、今すぐ帰りの荷造りをはじめたほうがよかろう」できる限り厳然たる口調で言ったつもりだったが、どこか甘さが匂うのは否めなかった。

「八時までに支度をしたまえ。ホテルに迎えをよこそう」大佐はさよならを言わずに通信を終わらせた。

ああ、急がなくちゃ。暗くなるまで数時間しかないわ。

「ヒシャム」エリサはテントから顔をのぞかせて助手を呼んだ。「チームメンバー全員をかき集めて。できるだけ多くの人手がいるの」

発掘現場までの数メートルを足早に歩くと、背後で一陣の砂埃が舞った。数分後にはエリサを取り囲んでチームメンバー全員が集まり、指示を待っていた。

「あなたはあの角のほうの砂を取り除いて」一番遠く離れた石の面を指さして、指示を飛ばす。「あなたは彼を補佐して。気をつけてね。これが私が思っているとおりのものだったら、この現場を立ち退かずにすむかもしれないわよ」

地球への旅

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